エンディングノートに、パスワードは書いていい?
「家族が困らないように書いておくべき」という説明と、「書いてはいけない」という説明の両方を見かけます。どちらが正しいのか、引き継ぐ人が実際に何をするのかから考えると、答えははっきりします。
2026-08-07 更新
結論:パスワードそのものは、書かなくて大丈夫です
エンディングノートに各サービスのパスワードや暗証番号を書き写す必要はありません。書かなくても、引き継ぐ人は必要な手続きを進められます。
代わりに書いておくと役に立つのは、「どこに何があるか」と「パスワードをどこに保管しているか」です。この2つがあれば、引き継ぐ人は迷わずに動けます。
なぜ、書かないほうがよいのか
エンディングノートは、本人が使えなくなったあとに、誰かが見つけて読む前提の記録です。そして、最初に見つける人が、必ずしも引き継いでほしい人とは限りません。引っ越しや入院、片付けの途中で、別の人が先に目にすることもあります。
パスワードそのものが書いてあると、見つけた人は誰でもそのまま使えます。反対に「保管場所」だけが書いてある場合、引き継ぐ人以外にとってはほとんど役に立ちません。同じ1冊でも、書き方によって意味が変わります。
もう1つ、現実的な問題があります。パスワードは変わります。書き写した時点の情報は、数か月後には古くなっていることが多く、更新し続けないと結局は使えません。保管場所であれば、そこまで頻繁には変わりません。
書かなくても、引き継ぐ人は手続きできます
「パスワードがないと何もできないのでは」と心配になりますが、実際にはそうではありません。
銀行・証券・クレジットカード
パスワードが分からなくても、相続人は戸籍などの書類を提出する正式な相続手続きによって、資産を引き継げます。むしろ本人以外がログインして操作することは、各社の規約で認められていないのが一般的です。引き継ぐ人に必要なのは、ログイン情報ではなく「どこに口座があるか」が分かる一覧です。
サブスクなどの継続契約
何を契約しているかが分かれば、引き継ぐ人は各サービスの問い合わせ窓口から解約を申し出られます。本人としてログインする必要はありません。ここでも必要なのは、サービス名と、支払いに使っているカードや口座の情報です。
写真・連絡先・思い出のデータ
その多くはスマートフォンやパソコンの中にあります。ここで大切になるのは、個別サービスのパスワード一覧より、端末そのものを残しておいてもらうことです。
代わりに書いておくとよいこと
パスワードの代わりに、次のような内容を書いておくと引き継ぐ人の助けになります。
- サービス名や金融機関名(「〇〇銀行のネット口座」「動画配信の〇〇」など)
- パスワードの保管場所(「パスワード管理アプリに入れている」「机の一番下の引き出しの封筒」など)
- そのサービスをどうしてほしいか(残す・解約する・引き継ぐ)
- 特に先に確認してほしいもの(お金がかかり続けるもの、なくすと戻せないもの)
- 最初に相談してほしい人
「解約してほしい」「これは残してほしい」という希望まで書いてあると、引き継ぐ人は判断に迷わずに済みます。これは金額の大小より、気持ちの負担を減らす効果が大きい部分です。
引き継ぐ人に伝えておきたい2つのこと
パスワードよりも、次の2つを伝えておくほうが手続きは進みやすくなります。詳しくはパスワードを書かなくていい理由で説明しています。
- スマートフォンを初期化・処分しないでほしいこと。写真も連絡先も、手続きに必要な確認の手段も、多くが端末の中にあります。
- 携帯電話の回線を、すぐに解約しないでほしいこと。多くのサービスは、手続きの確認コードを本人の電話番号にSMSで送ります。回線を先に解約すると、そのコードが受け取れなくなります。
例外として考えたい、スマートフォンの解除コード
ここまでの説明にあてはまりにくいのが、スマートフォンの画面ロック解除コードです。これは相続手続きで代わりに開けてもらうことが難しく、分からないままだと中のデータを取り出せないことがあります。
ただし、これもエンディングノートに書き込む必要はありません。たとえば次のような方法があります。
- 紙のカードに手書きし、封をした封筒に入れて保管する
- 封筒の置き場所は書き残さず、信頼できる人に口頭で伝えておく
こうすると、記録そのものと、その在りかを知っている人が分かれます。デジタル引継書にも、この用途の手書き用の非常用カードを印刷する機能があります。アプリには何も入力しないため、コードが端末やファイルに残りません。
暗号資産の自己管理ウォレット、暗号化したディスク、事業で使っているシステムなどは、これとは別の引き継ぎ方法が必要になることがあります。
よくある質問
パスワード管理アプリを使っています。マスターパスワードは書くべきですか?
エンディングノートに直接書くことはおすすめしません。前述のスマートフォンの解除コードと同じように、記録と在りかを分ける方法が向いています。多くのパスワード管理アプリには、あらかじめ指定した人が一定期間後にアクセスできる仕組みが用意されていることもあるので、お使いのアプリの案内を確認してみてください。
家族しか見ない場所に保管するなら、書いてもよいのでは?
保管場所を確実に管理できるなら選択肢の1つではあります。ただしエンディングノートは、必要になったときに探してもらう性質のものなので、置き場所が変わったり、想定と違う人が先に見つけたりすることがあります。書かずに済ませられるなら、そのほうが管理は楽になります。
パスワードを書かないと、何も引き継げないのでは?
そうではありません。銀行やサブスクは、正式な手続きの窓口が用意されています。引き継ぐ人が困るのは、パスワードが分からないことよりも、そもそもどこに何があるか分からないことです。一覧をつくることのほうが、実際には効果があります。
デジタルの持ち物を整理してみる
デジタル引継書は、使っているサービスや機器と「どうしてほしいか」を書き残せる無料のWebサービスです。会員登録もログインも不要で、書いた内容は端末の中だけで暗号化して保存します。
準備をはじめるこの記事とデジタル引継書は、希望を書き残すことを助けるものです。遺言書ではなく、法律・税金・相続上の効力はありません。実際の手続きは各サービスや専門窓口の公式な案内をご確認ください。